予防接種は感染症から子どもを守るために行われています。インフルエンザ菌(ヒブ)ワクチンと肺炎球菌ワクチンが定期接種化されてから、この二つの細菌による髄膜炎の発生がほぼゼロとなったように、予防接種は感染症の発症防止、症状の軽減に大きな働きをします。麻疹(はしか)輸出国と非難されたわが国から麻疹が排除されたことが2015年に認定されたように、地域のほとんどの子どもたちが予防接種を受けるようになると免疫をもっている人が増えるので、伝染病の流行を防止することができます。予防接種は感染症の予防だけではなく、妊娠早期の女性が風疹に罹患すると赤ちゃんが先天性風疹症候群という病気になることがあるために、風疹ワクチンは先天異常の発生の防止が主な目的で実施されています。また、B型肝炎ワクチンとヒトパピローマウイルスワクチンは肝がんと子宮頚がんの発がん防止が目的の予防接種です。
このように予防接種は子どもたちだけでなく地域の健康を守るために大切なものです。福井県小児科医会は予防接種を勧め、医師会とともに市町の予防接種事業に協力しています。
予防接種Q&A
予防接種を生まれてまもない小さな赤ちゃんにするのはかわいそうなので、半年くらいになってから予防接種を開始したいのですが?
予防接種は感染症を予防するために行うもので、感染症にかかりやすい時期が来る前に免疫をつける必要があります。そのために、予防接種を受ける時期が決められています。生後2か月になったらワクチンデビューをお願いします。
予防接種を受ける前に注意することは?
予防接種は普段から子どもの体のことをよく知っているかかりつけ医に接種計画を作ってもらった上で行うことが安全面からも大切です。予防接種をあちこちで受けたケースでワクチンの接種もれや重複接種が起こるリスクが高くなります。かかりつけ医を作りましょう。また、体温を測って熱がないことを確認してから出かけましょう。
予防接種を受けに行くときに持っていくものは?
市町の予防接種受診票と母子手帳を忘れずに持って受けに行ってください。
住んでいる市町と異なる市町の医療機関がかかりつけ医です。住民票のない市町で予防接種を受けられますか?
福井県内であれば、かかりつけ医のいる市町で予防接種を受けることができます。里帰りなどで県外で予防接種を希望される場合も含めて、ご不明な点があれば、お住いの市町の予防接種担当課にお問い合わせください。
どのような場合に予防接種を受けられませんか?
明らかな発熱がある場合や重篤な急性疾患にかかっている場合、受ける予定のワクチンを接種したときにアナフィラキシー(短時間で全身に激しい症状を起こすアレルギー反応)を起こしたことのある場合は予防接種を受けられません。慢性の病気がある子ども、熱性けいれんなどけいれんを起こした後、川崎病などでガンマグロブリン療法を受けた後など、予防接種の際に注意が必要な場合があります。かかりつけ医の指示にしたがってワクチンを受けてください。
咳や鼻水があります。予防接種を受けられませんか?
予防接種は健康なときに受けることが原則です。発熱がなく、軽い風邪症状が続いている場合には予防接種をすることがあります。心配なときはかかりつけ医に相談しましょう。
食物アレルギーの子どもは予防接種を受けられませんか?
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などアレルギー疾患があるからといって予防接種を受けられないことはありません。
ただ、インフルエンザワクチンは鶏卵で製造されるので、微量の卵蛋白が含まれています。重度の卵アレルギーの患者さんはアレルギー反応をおこす可能性があるので注意が必要です。
早産で生まれたので、予防接種の開始を遅くしたほうがよいでしょうか?
早産児でも通常は生まれたときからの月齢に合わせて予防接種を受けます。ただ、たいへん小さく生まれた場合には、主治医と相談して受けてください。
感染症にかかった後どれくらいの期間をあければ予防接種を受けられますか?
麻疹(はしか)は治癒後4週間たってから、風しん、水痘(水ぼうそう)、おたふくかぜは治癒後2~4週間たってから、突発性発疹,手足口病,伝染性紅斑、インフルエンザなどのウイルス感染症は治癒後1~2週間あければ、予防接種を受けられます。普通の風邪の場合は熱が下がって1週間たてば予防接種を受けられます。
一度に3種類、4種類のワクチンを注射して大丈夫ですか?
わが国では多種混合ワクチンが少ないので、3種類、4種類の同時接種をしています。同時接種により副反応が多くなるというデータはありません。単独接種にするとワクチンの接種が終るまでの期間が長くなり、その間に風邪を引いたために接種が延期になることもあり、計画通りに予防接種が進まないこともあります。日本小児科学会は同時接種を勧めています。心配な場合には、かかりつけ医に相談しましょう。
予防接種を受けた後で注意することは?
急な副反応は接種後30分くらいの間に起こることが多いので、予防接種を受けてから30分間は、接種を受けた医療機関内で様子を観察しましょう。何か異常があれば、すぐに看護師か医師に伝えてください。
予防接種を受けた日に運動をしてもいいですか?
接種当日はいつも通りの生活をしてもかまわいませんが、運動部の部活やスポ少の活動のような激しい運動は避けましょう。
予防接種を受けた日は入浴禁止ですか?
入浴してもいいです。体を洗う時に注射した部位をこすらないようにしましょう。
予防接種を受けた後、副反応に注意すべき期間はどれくらいですか?
一般に、生ワクチンの予防接種では受けてから2~3週間、不活化ワクチンの予防接種では受けてから48時間は副反応が出ないか気をつけます。
ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンでは接種当日か翌日に高熱がでることがあります。MR(麻疹、風疹)ワクチンは接種7~12日後を中心に約20%に発熱がみられます。高熱が続いたり、注射部位が広範囲に腫れた場合には予防接種をした医師に相談してください。
受け忘れていた予防接種があることに気づきましたがどうすればいいでしょう?
予防接種受診票に印刷されている接種期間が終わっていても、気がついた時点で接種すればたいていの場合は免疫が獲得できます。ただし、公費で受けることができる年齢を超えている場合は自己負担になります。いずれにしても、ワクチンを受ける重要性に変わりはないので、かかりつけ医に相談してください。
予防接種は子どもの時にしか受けられないのですか?
予防接種は子どもだけのものでありません。65歳以上の高齢者にインフルエンザワクチンの公費支援があるように、大人でも受けることができます。日本脳炎ワクチンの有効期間は3~4年間であるので、日本脳炎が流行している地域に渡航する人には日本脳炎ワクチンの接種が勧められています。このように大人でも、場合によっては接種が必要なワクチンがあります。
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